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大阪高等裁判所 昭和24年(を)2051号 判決 1950年6月03日

被告人

山本一郎

外一名

主文

本件控訴にいずれもこれを棄却する

理由

弁護人森勘七、同一本正光代、同豊蔵利忠の控訴趣意中(訴因逸脱に関する部分)について。

しかし訴因は公訴事実を法律的に構成したものであり、これを明示するにあたつてはなるべく日時場所方法をもつて罪となるべき事実を特定すべきであつて本件についていえば公務執行にあたり加えた暴行あるいは脅迫を構成する事実の大体を他と区別して認識し得る程度に明示するをもつて十分であり、きわめて微細な点まで詳細に明確にすることを要するものではない。さればすでに右訴因にして明示された以上、裁判所において審理の結果微細な点において起訴状の記載と相違していても右特定性を害しないかぎり何ら原判決の違法を招来しないものと解すべきである。今これを本件にみるに判決における「持つていつてみろこつちにも考がある」は公訴事実の「本人の承諾を得てもつて行くのか」と大体において同趣旨であり、また判決の「乗車せんとする小代巡査を地上に顛倒せしめ」は公訴事実の「右横尾喜蔵等の前に立ちふさがり或はその袖を引張る等云々」に該当するし、さらに「自動車に乗つて所持品たる濁酒を覆す等」との原判示事実は公訴事実の「証拠品の濁酒を覆す等」にあたるから前述の理由により何らの違法はないのであつて訴因以外の事実を認定した旨の所論はあたらない。

(弁護人森勘七、同一木正光代、同豊蔵利忠の控訴趣意)

(前略) 起訴状の訴因は被告各人の行為の性質範囲が頗る不明確にして防衛上の頗る不便なるを以つて検察官の釈明を求め以つて之を明かにした即ち、

一、金国鎮の行為

「密造」が何故悪い「女世帯だと思つて持つて行くと承知しないぞ」と云つた事及び上にある瓶を引きずり降した行為

二、山本一郎の行為

「本人の承諾を得て持つて行くのか」と云つたこと「横尾喜蔵等の前に立ち塞がつた」行為、横尾喜蔵等をジープに乗せない様にした行為

三、姜四福の行為

「自動車の上に乗りし」行為

以上が検察官の起訴の訴因である。然るに原審判決が右の訴因以外の事実を認定し以て刑罰を課したるは失当である即ち

一、山本一郎「持つて行つて見ろこつちにも考がある」は訴因の「本人の承諾を得て持つて行くのか」と意味異なる

次に「判決の乗車せんとする小代巡査を地上に顛倒せしめ」は訴因になし

二、姜四福「女世帯だと思つて行つて行くと承知せぬぞ」といつた点は訴因になし

「自動車に上つて証拠品たる濁酒を覆す等」の行為は訴因でない(以下省略)

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